The Latest Research (& my experience of being both an HSP and HSS on vacation in Europe)
最新の研究（＆HSPでHSSの私の旅行体験記 in ヨーロッパ）
By Elaine - 22 Comments
今回のブログでは、まず最新の研究についていくつかご紹介したいと思います。それもとても良い出来映えの、そしてみなさんに興味を持ってもらえそうな研究を。その後は、みなさんにもっと役に立ちそうな、そして個人的なことについて書こうと思います。ただ今回は、役に立つというよりは個人的な色合いが強くなってしまうかもしれません！しかも長い記事に。というわけで、さっそく研究のことから始めていきますね。
論文を紹介する際は、各論文における正式な引用を提供しています（※）。そうすればみなさんがその論文をもっと読みたいと思ったときにGoogle Scholarで調べられるからです。通常、pdfファイルで読むかダウンロードすることが可能です。Google Scholarで検索し、論文の引用が表示されたら、その論文の右側にリンク先のクリックボタンが見えるのでクリックしてみてください。では4つの研究をご紹介します。
※訳注：論文の正式な引用とは、著者名、タイトル、出版情報（雑誌名・巻号・発行年）、ページ番号などの要素を入れた引用のことを指します。
※訳注：カッコの中の日本語タイトルは、訳者が便宜的に訳したもので、このような日本語のタイトルがあるわけではありません。コピー＆ペーストして検索する際は、英語のタイトルのみコピーしてください。
Sperati, A., Acevedo, B. P., Dellagiulia, A., Fasolo, M., Spinelli, M., D’Urso, G., & Lionetti, F. (2024). The contribution of Sensory Processing Sensitivity and internalized attachment representations on emotion regulation competencies in school-age children（感覚処理感受性と内在化された愛着表象が学齢期の子どもの感情調整能力に及ぼす影響）. Frontiers in Psychology, 15, 1357808.
この研究で、研究者たちは（ほかの研究者たちと同様）HSCが他の子どもたちと比べてどれだけ親の影響を受けやすいか、特に、安定して愛されていると感じていることが、彼らの感情コントロールにどのような影響を与えているかを知りたいと考えました。感情コントロール（感情調整）とは大まかに言えば、適切なタイミング・適切な量で、適切な感情を持つ能力を意味します。もしあなたが子どもたちと一緒にいた経験をお持ちなら、これをどれだけ上手にできるか、そして上手にできるようになるために要する年齢について、子どもたちに大きな差があることをご存知でしょう。当然、空腹感や疲労感も影響します。
研究はイタリアで、６～8才の子どもたちとその母親を対象に行われました。母子間の愛着の質は、学校での遊び時間に個別に撮影した動画によって測定しています。研究者たちは、子どもたちに人形と一緒に遊んでもらいながら、アタッチメントのストレス要因と関連する4つのストーリーステム（悪夢、ひざの痛み、病気、ショッピングセンターでの迷子）への反応を観察します（※1）。具体的には、子どもたちに（それらの場面における）母親もしくは養育者の態度を物語として語ってもらうのです（例：あたたかいか、敏感に気づくか、冷たいか、無反応か）。すると、愛着および感情コントロールの質自体は、HSP尺度の点数にかかわらず統計的な差はみられませんでした。すなわち、HSCは他の子どもたちと比較しても、母親への愛着が強くも弱くもなく、感情コントロールもまた差がなかったのです。
ところが、母親との愛着関係の観点から見てみると、愛着関係が良いHSCは感情コントロールが平均よりも良く、愛着関係が良くないHSCは感情コントロールが平均より悪いという結果が示されました。これはまさに感受性差理論（※2）が予測するとおりです（感受性差については春にアップしたブログ記事―“研究はまさに核心をつく：敏感であるとはすなわち処理が深いこと”で、より詳しく書いています。“深い処理”こそ私たちの“感受性差”の理由だからです）。おそらく、HSCは母親の育児態度に注意深く関心を向け、処理しているのでしょう。
※訳注1：子どもたちのアタッチメントスタイルをアセスメントする心理検査に、ストーリー・ステム・アセスメントという検査があります。ストーリー・ステムとは“未完成の物語”という意味で、人形を使いながら、物語の初めの部分を子どもに話した後、その後の物語を子どもたちに創作してもらいます。その内容よって子どもたちの家族関係やアタッチメントスタイル、情動表出を観察します。
※訳注2：この「感受性差（理論）」という言葉には、いろんな日本語訳があります。「差次感受性（理論）」「感受性反応（理論）」などの訳がありますが、原語は「differential susceptibility」で、“differential”は”差、違い”、 susceptibilityは” 影響を受けやすいこと、感受性が鋭いこと、多感であること”を意味します。つまり”HSPは（子どもの頃の）環境から受ける影響の大きさに、HSPではない人たちとは差がある（＝HSPではない人たちより、良くも悪くも大きく影響を受ける）”という意味です。このサイトではシンプルに感受性差と訳しています。
まとめ：私たちの様々なものへの感受性、特に幼少期の親に対する感受性は、私たちについて多くのことを決定し、人としての特徴まで決めてしてしまいます。HSPが多様で、柔軟で、個性豊かなのはそれゆえです。でも幸いなことに、私たちHSPは優れた介入に優れた反応を示すことを思い出してほしい。感情コントロールが上手くできないHSCも、別の機会に、おそらく愛情深い親戚や先生、セラピストから、それを学んでくれることを願っています。
Dong, Q., Ma, Q., Wang, W., Wang, J., Pluess, M., & Ma, X. (2024). Environmental sensitivity moderates the longitudinal effect of fathers’ positive parenting on mental disorders in Chinese adolescents（環境感受性（※）が中国の青年期の若者における父親のポジティブな子育ての精神疾患への長期的な影響を調整する）. Journal of Affective Disorders, 366, 153-161.
この研究は中国で行われました。青年期の中国の若者の、親（父親、母親、もしくは両方）とのより良い関係が、うつ症状、ADHD、自殺念慮を軽減し、健康を高めるか、そしてHSCであることがそれに影響するかを調べました。結果、母親より父親のポジティブな子育てが精神疾患を軽減すること、そしてHSCの若者ほどその効果が高いことがわかりました。
まとめ：この研究結果も驚くべきものではありません。すべてのティーンエイジャー、特に敏感なティーンエイジャーには、父親からの思いやり、優しさ、受容が特別な効果をもたらすからです。
※訳注：環境感受性とは、生物には環境からの受けやすさには個体差があるという理論のこと。この理論の提唱者の一人でロンドン大学のマイケル・プルース教授は、生物には感受性レベルが異なる３つのグループ、“とても敏感なグループ（約20～35%）”・“どちらにもつかないグループ（約41～47%）”・“敏感でないグループ（約20～35%）”が存在することを発見した。この３つの内“とても敏感なグループ”の人間がHSP。
Williams, J. M., & Blagrove, M. (2024). An investigation testing the perceptual advantage of Sensory Processing Sensitivity and its associations with the Big Five personality traits（感覚処理感受性の知覚優位性をテストした調査およびビッグファイブ性格特性との関連性）. Journal of Research in Personality, 104539.
この研究では、ウェールズの222人の実験参加者に、３段階の難易度で視覚的に見えにくくした画像から、単語を検出し、識別してもらう検査を受けてもらいました。さらにHSP尺度（HSPS）にも回答してもらっています。するとHSP尺度の中の肯定的な側面が、より高い検出能力と関連していること、そしてビッグファイブ性格特性のうちどの特性も検出の素早さとは関連がないことがわかりました。
この研究は、過去にWilliamsとBlagroveが行った研究を再現したものです（Williams, J. M., Carr, M., & Blagrove, M., 2021, Sensory processing sensitivity: Associations with the detection of real degraded stimuli, and reporting of illusory stimuli and paranormal experiences. Personality and Individual Differences, 177.）。２つの研究とも、Google Scholarで論文タイトルを検索したら見つけることができます。またPDFファイルでのダウンロードが可能です。
※訳注：この研究内容を簡単に説明すると、HSPは知覚する能力（見えにくい物に速く気づき、それが何かがわかる能力）が優れていることがこの実験によってわかったということです。またビッグ５（世界的に信頼されている性格分析で、人の性格特性は５つの因子によって構成されているとしている）と知覚能力に関連がなかったということは、この知覚能力が一般的な人の特性とは関係なく、HSP独自のものであることを意味しています。
まとめ：この論文の著者たちは、HSPが知覚の優位性を持っていると説明することで、一般の人々や心理療法を受けているHSPが、この特性が持つ優位性に気づくことを期待している。HSPはそうでない人たちよりも知覚が優れているのです。
Tabak, B. A., Gupta, D., Sunahara, C. S., Alvi, T., Wallmark, Z., Lee, J., … & Chmielewski, M. (2022). Environmental sensitivity predicts interpersonal sensitivity above and beyond Big Five personality traits（環境感受性はビッグファイブ性格特性を超えて（対人関係の感受性構造を）予測をする）. Journal of Research in Personality, 98, 104210.
この論文で研究者らは、ほぼ同じ結果になった２つの研究を報告している。最初の研究の実験参加者は1377人で、研究者らはHSP尺度を２つの因子（ポジティブとネガティヴ）に分類した（これを賢明な策だと思う）。そして、HSPは３つの対人関係の敏感さの領域において優れたパフォーマンスを示すことがわかった。３つの領域とは、共感性（ポジティブな因子と関連）と社会不安（ネガティブな因子と関連）、そして心の理論（※）（両方の因子と関連）である。そして研究2では（母集団数＝1240）、ビックファイブのすべての性格特性（神経症的傾向・外向性・協調性・誠実性・開放性の因子）を統計的にコンロールした上で、上記の結果のほとんどを再現する結果になった。すなわち、HSP尺度は、ビックファイブの性格特性を超えて“独自の分散”を説明したのであり、これは高感受性は単にビックファイブ特性の1つまたは組み合わせではないことを意味している。
※訳注：心の理論とは他者の心を類推し、理解する社会認識能力のこと。ASDでは障害が認められる。
まとめ：今回もまた、HSPはある分野に優れていることがわかりました。今回は社交性―共感性と他者が考えていることを理解する能力―です。ここには他の人を喜ばせたいという気持ちも加わります。
※訳注：この論文、わかりづらいので、すこしわかりやすく説明してみます。「独自の分散」という言葉が出てきますが、これは、ある特定の要因（変数）が他の変数とは独立して説明できるバリエーションの量を指しています。
この研究で、HSPS（HSP尺度）が「独自の分散」を示したということは、HSP尺度が対人感受性に与える影響について、ビッグファイブの性格特性（神経症傾向、外向性、誠実性、協調性、開放性）とは別に存在していることを示したということです。つまり、HSP尺度はビッグファイブの特性とは関係なく、独自に対人感受性に影響を与える力があるということを意味しています。
もっとおおざっぱに言えば、HSPは対人感受性が高い、つまり共感能力や人の気持ちを理解する能力が高い、ということがわかったということです。
2つの気質の戦い、その欧州戦
この前のブログでも少しお話しましたが、5週間のヨーロッパ“休暇”に出発しようとしていた時の話です。何人かの友だち、特にHSPの友人たちは私の計画を聞くとビックリし、首を横に振りました。おそらく私の年齢や、私が入院治療を無事に終えたばかりだったことを心配してくれたのでしょう。友人たちは、一度の旅行に5週間は多すぎるとみていました。でも、私の中で進行していた2つの気質の戦いについては、友人たちはわかっていませんでした。
“戦い”という表現は強すぎるかもしれませんね。私の中の２つの性質―HSPとHSS（刺激追求）の争いは、むしろ家族喧嘩と言ったほうがいいかもしれません。しかもこの２つは、実際にはそれぞれ独立した性質だということが心理統計によってわかっています。そして私にとってこの２つはまさに独立している。この２つを両方持っている人もいれば、どちらも持っていない人もいるかもしれません。でも私が両方持っているのは間違いありません。（詳しくはTracy Cooperのサイトの記事、Thrill: The High Sensation Seeking Highly Sensitive Personをご覧ください）
私がどれくらい刺激追求型（HSS※）なのかを認識するのには、いくらか時間がかかりました。なぜなら、この性質を持つ多くのHSPと同様、私はリスクを冒さないし、不安になるようなことも好きじゃないからです。だから私の中ではいつも妥協が進行します。今回のケースでは、HSSの私は旅行が大好き、行ったことがない場所に行ってみたいと主張します。いっぽうHSPの私は行くなら安全な場所だけがいい、ヨーロッパのような、そして都会じゃないところがいいと主張しました。旅行のアイデアは、しばらくの間はそれで落ち着きました。私のような年齢には多すぎるかしら？ するとHSSの私はこうささやきます―“体は使わなきゃ、使わなかったら衰えちゃうよ”と。HSPの私も“衰える”ことには共感できました。彼女もそれを望んでないからです。
訳注：刺激追求型（High Sensation Seeking）とは、HSPとは異なる脳のシステムで、好奇心が強く、新しいことに強い興味を示す。HSPとHSSの両方を持つタイプは、”すぐに圧倒されるが同時に飽きっぽく”、”新しい経験を求めるが、動揺はしたくなく、大きな冒険をしたくない”。”ブレーキとアクセルを両方踏んでいるような気がする”。HSSセルフテストはこちらから。
時差ぼけ9時間？海外4カ国？
本格的な交渉が始まったのは、カリフォルニアからヨーロッパに向かうおよそ９時間の間からです。そして9時間の時差の影響を緩和するために（1時間につき1日が必要）、十分な滞在期間が必要だというHSSの提案にHSPはしぶしぶ同意しました。でも後で振り返ってみると、実際には3週間で十分でした。5週間はHSSのためのもので、長ければ長いほど、彼女には都合が良かったのです。
でも、問題は、そもそもなぜ私はヨーロッパに行きたいと思ったかです。これまでもHSPの講演のために訪れたことはありましたが、純粋に遊びで行ったことはありませんでした。私の知り合いで、毎年のように観光スポット以外の場所に行きたがるHSPはまずいません。まして外国に。でも私は今ではHSSの彼女に感謝するようになりました。毎年旅行に、それも今まで行ったことのない場所に行きたがる彼女のおかげで、全米を見るという体験ができのですから。とはいえ私の中のHSPの部分は、彼女が安全でないと感じる場所には行きたがりません。発展途上国などとてもむり。でもヨーロッパの新しい場所だったら、うん、協力してあげてもいいと彼女は思う。清潔だし、食べ物も安全だし、言葉もほぼ理解できる。ゴルディロックス（※）の私にはベッドが硬すぎる場合があるので、スーツケースの上に丸めて取り付けられる緩衝材を持って行きます。そうすればベッドが硬すぎた場合、マットレスカバーの下に敷くことができるからです。これホントの話です。
※訳注：ゴルディロックスとは、童話「ゴルディロックスと3匹のくま」を元にしたたとえ話で、ゴルディロックスという少女が、3つのお粥を味見して、冷たくも熱くもない真ん中の粥を選んだことから、“ちょうど良い”のたとえに使われるようになった。
もうひとつの妥協は徒歩の旅行
でもあなたはここでこう尋ねてみたくなるかもしれませんね。だったらなぜ徒歩の旅行なの？なぜ同じ場所に数泊してから、列車や車で都市から都市に移動しないの？一般の人がそうするように、と。う～ん、それはおそらくHSPの私は都会が好きじゃなく、HSSの私も新しいものを見ながら移動し続けるのであれば、どこでもかわないと思っているからです。それに歩いている方がその土地に入っていっているという感覚があるし、いろんなものを詳しく見れるので、どちらにとってもハッピーなのです。
長年、私たちはヨーロッパ中のハイキングコースを利用して、“ガイドなし”の徒歩旅行、とりわけフランスの、Grande Randonnee（グランド ランドネ）に出かけてきました。パリに着くといつもAu Vieux Campeurに向かい（アメリカのREIのようなお店）、コースが載っている本を手に入れると、旅行へと出発します。どこで夜を明かすかは、その日たどり着いた場所次第、つまり運任せでした。時には誰かの家に泊まるはめになったこともあります。そしてご想像通り、しばらくすると、HSPの私は不確かな状況にくたくたになってしまいました。
今では私たちが旅行の計画を立てるとき、HSPの私は、旅行会社Inntravelの利用を強く主張するようになりました（本社はイギリス）。この会社は様々なタイプの旅行を扱っていますが（サイクリング、ドライブでの旅行等など）、中でも力を入れてるのは、あまり知られていない、人混みのない、美しいエリア（HSPの私には重要）のセルフガイド旅行です。宿泊先はたいてい小さな田舎町や村です。基本的に添乗員やガイドのつかない自由な旅行ですが（HSPには不可欠）、旅行会社は地図を用意してくれ、道順やすべての移動手段の計画を立ててくれます。最適な出発地がホテルから遠いときはそこまでのタクシーも含まれます。一方、荷物は前もって次のホテルにタクシーで届けられ、そのホテルもまた予約されています。いつも小さな、かわいらしい、食事の美味しいホテルです（時には大きくて、歴史のある、眺めの素晴らしいホテルの場合もありますが、食事はやはり美味しい）。HSPの私は、すべて決まっていて、整っているが大好きなのです。それに、もし問題が発生したら、旅行会社に電話すればいつでも誰かが対応してくれます。
唯一問題があるとしたら、一日中歩くので疲れてしまうことです。Inntravelは旅行の難易度に基づいて3段階にランクづけしています。そこで、最近では1，もしくはせいぜい1～2の間のランクだけを選ぶようにしています。とはいえ、ランク１のフラットな道のりでも、一日中、約10マイルは歩くので、その日の終わりにはかなり疲れてしまいます。ふつう人は毎日、都市（ホテル）から都市（ホテル）の間を歩いたりしないですよね。たいてい到着した場所で何日かぶらぶらしたり、休んだりするものです。でもHSSの私は当然のごとくそんな日も歩き続けようとするので、時に私は頑として譲らず、散歩だけするようにしています。
一度の“バケーション”で２回、いえ実際は３回のウォーキング旅行？
今回のバケ－ションでは、４週間の内２週間がウォーキング旅行で（巨大空港での移動日の“セルフガイド徒歩旅行”を入れると５週間）、３週目はウォーキングに加えてカヌーやセーリングもやることになってしまいました！
最初の週はフランスのドルドーニュ渓谷（※）の旅行で、私たちの息子とその妻、そして彼らの息子で私たちの最愛の孫である２人のティーンの少年たちと一緒です。実は前回彼らをフランスに連れて行く予定だったのですが、出発直前になって私たちがパリでCovid19にかかってしまいました。ですから今回は４年越しの（そして４つ年齢を重ねた）埋め合わせです。孫のうち一人はその後すぐに大学に進学する予定だったので、これが彼と一緒に行く最後の機会のようにも思えました。とはいえ、私たちは全員、この二人のティーンエイジャーのペースに合わせなければなりません！
※訳注：ドルドーニュ渓谷は、その川沿いに中世時代の多くの昔の町並みが残っているところで、その多くが「フランスで最も美しい村」に登録されています。
二人の少年たちは礼儀正しく、そして寛大でした。アート（※）と私は30分に一度、（疲れ切ってしまう前にすこしでも長く歩くため）5分の休憩を取り、くわえて、30分のランチ休憩をとりました。一方少年たちに休憩は必要ありません。それどころか彼らはその時間を使って、格好いい筋トレやパフォーマンスを見せてくれます！道中疲れ切ったときのためにタクシーを呼ぶ手はずをしていたのですが、一度として呼ぶことはありませんでした。私たちは歩き通したのです！
※訳注：アーロン博士の夫で心理学者のアーサー・アーロン氏のこと。“吊り橋効果”の研究で有名な心理学者。恋愛と人間関係の専門家。
その週が終わると、アートと私はレンタカーを借りて、スイスの別々の場所に住む2人の友人に会いに行きました。一人はジュラ、一人はバーゼル（※）近郊の小さな町です。ヨーロッパをドライブするのは相当疲れると申し上げておきます。彼らと一緒に過ごす時間は私たちにとって自由時間だったのですが、二人は私たちのために、お望みとあればとたくさんのプランを用意してくれていました。そしてみなさん、もうおわかりでしょう、私のHSSの部分は、私たちがいた町（イヴェルドン・レ・バンやバーゼル）の徒歩旅行やヌシャテル湖のフェリー観光その他に出かけたがりました。でもその時まだ私は気づいていませんでした。私の体がもうついていけないこと、そして私には休みが必要だったことを。
※訳注：ジュラはフランスと国境となるジュラ山脈との間に広がる丘陵地帯を含む地域。世界的に有名な時計ブランドが集まるメッカとして有名。ちなみにジュラ山脈は、恐竜の時代の”ジュラシック（ジュラ紀）”の名前の由来になった山脈。
その“お休み”の週を終えると、私たちはチューリッヒからオスロ、そしてオスロからベルゲンへと飛びました。もちろんこれは“新たなウォーキング旅行”に出発するためです。この旅行の難易度は1～2、プラスオプション2sだったのですが、私たちはこの“2”を軽視していました。そして実際かなりハードなウォーキングとなったのです（難易度は確認はしていました。ただドルドーニュ渓谷も1～2だったのです）。でもなんとか私たちは乗り切り、そしてとても楽しむことができました。少なくともその日の終わりまでは･･･。ホテルは素晴らしく、もちろん、フィヨルドは信じられない美しさ。そして訪れた場所はちょうどリンゴ収穫の最盛期でした。私たちのいたエリアだけでも世界中のリンゴの多くを栽培していて、道を歩いていると好きなだけとって食べていいと言われるほどです。さらにリンゴ酒醸造所をめぐる“シードル・トレイル（シードル散策）”もあって、様々な種類のシードルを楽しむことができます。この地域ではこのシードルトレイルにいま最も力を入れているのですが、これはちょうどカリフォルニアのワイン産地のワイントレイルのようなものです。ただ違うのは、シードルはワインよりはるかにアルコール度数が低く、そして観光客も少なく、すべてが静かで、穏やかだということです。
最後は“リラックスした”船での旅行
その週が終わると、今度はベルゲンからアムステルダム、そしてアムステルダムからスコットランドのインヴァネスへと飛びました。そこで2人の友人と落ち合い、カレドニア運河を、船で一週間かけてスコットランドを横断する旅行に出かけるためです。その行程にはあのネス湖のような大きな湖もあります。リラックスした旅になりそう、みなさんもそう思われたのでは？さてどうだったでしょう。船には私たち以外に8人の乗客と（たくさんのおしゃべり）、そして5人の乗組員たちが付き添っていました。クルーの一人の唯一の仕事は、一日中、停泊先でのウォーキングの間、はたまたサイクリング、カヌー、セイリングの間に私たちを退屈させないことでした。ウォーキングによってはとても距離の長いものもあり、滝まで行ったり、ボートに追いつくために湖沿いを歩くものもありました。もちろん、それらはすべてオプションなのですが、私の中のHSSは、彼女抜きで他の人たちが素敵なものを見に行くのを許そうとしませんでした。雨が降ろうが降るまいが、彼女はみんなと一緒に楽しみたい！
私とアートは毎朝1時間の瞑想をするのが習慣なのですが、船上での朝食は8時からなので（オプションなし）、6時には起きなければなりませんでした。さらに19時の夕食前に、もう1時間の瞑想の時間を確保しなければなりません。場合によっては瞑想の時間が短くなってしまうこともありました！そして客室の雰囲気はかなり“和気あいあい”。寝るところは2段ベッド。ぐっすり寝ることができませんでした。夜中にお互いが起きる度に気づいてしまうからです。
そして私たちはインヴァネスからロンドンのヒースロー空港へと飛びました（ヒースロー空港のことについては聞かないでほしい、HSPにとっての悪夢です（※））。ターミナル5から、“空港”ホテルのあるターミナル2と3まで、ラゲージを引きずりながら歩いた時間は1時間。続いてしなければならなかったのはロンドン地下鉄の把握です。これは私たちのかけがえのない共同研究者、マイケル・プルースと、彼の新しい奥さんと赤ちゃんと夜のひとときを過ごすためです。とっても居心地良く楽しい時間でしたが、（移動は）疲れました。翌日、私たちは7時間以上かけてワシントンDCへと飛びました。これはサンフランシスコへの直行便がとれなかったためです。そこで、ワシントンDCで宿泊し、友人たちと会い、さらに7時間かけてようやく自宅のあるサンフランシスコへと飛行機で戻りました。
※訳注：ヒースロー空港は広大で、ターミナル数が世界最大級、移動に時間がかかり、複雑でわかりにくいことで知られる。世界最悪との話も。
5週間の旅行の後の疲労困憊と一時休戦
そうです、とうぜん帰ってから私は疲れました。でもまさか、一ヶ月もそれが続くとは予想していませんでした。いまもまだ回復途上です。長時間のウォーキングはしてるか？ですって？とんでもない、もう十分。こんなに回復に時間がかかることに私はとても驚きました。私たちと一緒にヨセミテ・ハイカントリーに1週間旅行した友人が、回復に一ヶ月かかったことを思い出すまでは（彼女はそのための準備をしていませんでした）。大きな回復が必要な時、きっと体はシャットダウンしてしまうのかもしれません。
要するに、HSSは自分のやりたいように行動し、HSPはといえば、体の声を無視したら高いつけを払うことを実証する羽目になった、ということです。でも、とりわけ驚いたのは、その後の無気力な気分とぼんやりした脳でした。今ではそれは、肉体的にきつかったからだけではなく、精神的にもきつかったからなのだと理解しています。つまるところ、脳も体の一部なのです。考えてみると、理解すべきとても多くの精神的な要因がありました。こなさなければならないタイトなスケジュール、乗り損なった列車や飛行機やバス、あるいは食事抜き、それに加えて従わなければならない膨大な指示、間違いの修正、そして探し物。探し物は荷物鞄の底にあるのを見つけるまでいつも長い時間かかり、その度に貴重な時間が奪われてしまいます。でなければ、もうあきらめるか、もしくは後になって出てくる始末。それも必要としていた時よりすっと後になって。
こうした毎日の差し迫った小さな事柄のすべてが、HSPの私をとても心配にさせるので、彼女は旅行全体を楽しむことができなくなってしまうのです。唯一例外は、ホテルの部屋でバタンキューとなって、献立を考えたり料理の心配をせずに最高の食事ができる時だけ。一方HSSの彼女は、もちろん、こうした様々な、新しいこと全てが大好きでしかたがありません。
それでもHSSは私の人生を冒険で満たしてくれる
とはいえ、HSPの私も、この５週間を振り返って、全体としてはとても楽しかったと思っています。そして終わってしまってさみしいと感じている。一方HSSの方はといえば、もちろん、今回のことすべてにほくそ笑んでいます。そしてInntravelが提供するさらに魅力的な旅行を眺めながら、ふたたび主導権を取り戻そうともくろんでいます。なにしろ毎年新しいプランが出てくるのですから。
ようやく私はこうした力関係を受け入れるようになりました。実のところ、みなさんに提供できる答えのようなものはありません。ただ、あなたが私と同じようにHSSでHSPだった場合、何か得られるものがあるかもしれない、そう思って、現在進行中の小競り合いについて書いてみました。もしかしたら、私にとってどんな感じなのかを知るだけでも役に立つかもしれない。そしてこの組み合わせによってよりクリエイティブなれることを知ることができるかもしれない、と思って。なぜなら、創造とはさまざまな新しい情報を処理することだからです。
ただ（本当のところは）わかりません。そしてもうこれ以上悩みません。これまでいったいどれほど、HSPがHSSに奪われた出来事があったでしょう（これは夫のせいではありません）。すごく困難な旅行もありました。でも、なんとか切り抜けられたし、今思い返すとどれも幸せな思い出になっているのです。例えば、ヨセミテのハイカントリーのキャンプ場を巡った５日間のハイキング。あるいはグランドキャニオンの（HSPにとっては）恐ろしい急流をボートで下った15日間の旅。どちらも私がこれまで体験した中で最高の旅行です。そして私の中にHSSがなかったら、勇気を出してそんな冒険をすることは決してなかったでしょう。私はそのことを認めます。ええ、だから今はただこの戦いを見守っています、次の旅行についてあれこれ考えている自分を、微笑んで見つめながら。
